2014/09/24

「トイレの番人」

ファベーラギャングとジーコの話の投稿の反響が思ったより大きかったので、感覚がヒリヒリするような話じゃないんだけど、 ブラジルとアルゼンチンの国境辺りの出来事を。

2009年の話ね。
ブラジルから陸路でアルゼンチンに向かうことに。
リオデジャネイロからその辺の人に聞きまくってバスの乗り場を確認。
なんと移動時間は24時間も(!)かかるという。
えー。国内の高速バスに乗るのも嫌なのになー。
しかもバスターミナルで時間を潰すためにお茶してたら横のテーブルのブラジル人が、
「バスの中ではゴキブリに気をつけろよ!このバスは通称「ゴキブリバス」だぜ!hahaha~!」
みたいなこと言うの。しかも超陽気に。
ま、子供の頃から昆虫類とか割と大丈夫だし問題ねえだろ。
それにしてもターミナルに泊まってるバスを見てみると小綺麗だし、ゴキブリがいる空気感なんか全然ない。

おちょくられただけかなと思って大量の食料と飲み物を持ってバスに乗り込む。
行き先はブラジルとアルゼンチンの国境あたりにある「プエルト・イグアス」。
ここには「イグアスの滝」っていう観光スポットがあって、世界三大瀑布とかって呼ばれてるみたい。
俺の中での最強の滝は栃木の「華厳の滝」なんだけど、どんなもんだろ?

am8:00そろそろ出発時間だ。
乗り込むとやっぱり綺麗なバスだ。 ゴキブリの話はやっぱりおちょくられたんだな。
予約制の席で、小学生の頃から定位置だった一番後ろの真ん中の席を取っていた。
いただろ?後ろではしゃいでるバカ。それ俺。
しかも一番後ろにはトイレが付いてて、近くていいかなーとか思ったり。
席は埋まってる。バスを使う人多いんだな。

しかし、出発して30分後にはちょっと後悔。
そうです。だいぶトイレが臭いのです。走りだすまであんまり臭わなかったんだけどなあ。
でも変われる席ももうない・・・。ま、いいか。慣れんだろ。

何時間か走ると、白人の綺麗な女の子がトイレに立った。
俺の横でドアをノックしている。トイレに一番近い席にいる俺は中に誰も入ってないのを知っている。
ノックをしても返事がないからドアを開けようとするがなんだか開かないようだ。
中からロックがされてるわけではなく、ただ単に建て付けが悪くて引っかかっているようなのだ。
ちらっと俺の顔をみて、
「誰か入ってるの?」
というので、俺は「入ってないと思う」と告げてドアノブを思いっきり引っ張った。
少し歪みながらドアが開いた。
彼女は可愛らしい笑顔を俺になげかけて、「ありがとう!」と言ってきた。
・・・なんだよ・・・ あんな笑顔までもらっちゃって役得だったな・・・なんて事を思いながら窓の外に目をやった。
でもさ、聞こえてくんだよね。音。
さらにトイレから出る時も「ガタガタガタっ!!」って音がして、さらにちょっと匂いが・・・。
やっぱこの席失敗だったかな・・・

サービスエリア風のところに停まって休憩。
小腹が空いてきたのでハンバーガーとスナック類をいくつか買ってまたバスに乗り込む。

再びバスが走りだした後、しばらくして先ほど買ったハンバーガーをほおばる。
お、なかなか美味いな。
しかしそんな最中もトイレに立つ乗客がとめどない!
かなりの頻度で、

乗客がトイレの方にくる

ドア「ガタガタ!」

俺の方をちらっと見る

乗客「この中誰か入ってる?」

俺「いや、入ってないと思う」

無言でドアを無理やり開けてあげる

俺「どうぞ」

乗客「サンクス!」中にはいる

音ハンパない

「ガタガタガタン!」

ドアが開く

匂いハンパない

の繰り返し・・・
かくして俺は「トイレの番人」に成り果ててしまった。
何回来んだよ!ヒト!

うぉい!ハンバーガー食ってらんねえわ!匂いと共にうんこ食ってる感でてきたわ!

3分の1ほどを残し、座席の前のネットのところにハンバーガーを置いて寝ることに決める。
てゆうかそこそこ寝たフリでもしてないとえんえんと「番人」としての仕事が終わらないし。
最初に番人の仕事をした女の子に関しては、寝てる俺を起こしてまでドアを開けさせる始末だ。ヤレヤレ・・・

1時間半ほど寝ただろうか。窓の外はもう真っ暗。 車内も暗くなっていた。
・・・?・・・・なんか違和感のある気配がする?
目をシパシパさせながら脳みそをもう少し現実にもどしてみる。
・・・ん?・・・・ハンバーガーがない?
・・・なんだこの黒いカタマリ?・・・・・
・・・・・・・!?・・・・・・・・・・・・まさか・・・・・・
なんと!俺の食べかけのハンバーガーにちっちゃめのゴキブリが大量に張り付いて触覚を動かしている!ファック!ターミナルで一緒だったやつが言ってたの本当だったわ!オブリガードっ!!!
「昆虫大丈夫!ニコニコ」・・・嘘でした!こりゃだめだ!気持ち悪いわ!
とりあえず視線30cm先の出来事をしばらくみて、対策を考える。
・・・・・んー・・・この状況で対策ないわ。
一気に散られた方がパニックだし。
はあ・・・・。
で、俺の出した答えは「知らんプリを決めこんで朝まで寝る」にした。
対策が後ろ向きだな。でもしゃあない。
そりゃ寝つけないけど、もうどうしようもない。

明るくなった頃になんとなく目を覚まして、恐る恐る座席前ネットを覗きこむと小さいゴキが一匹いるだけになっていた。
これならいけると判断。そいつごと一気に紙に来るんでビニールで封をする。
しっかし、このバスのどこにそんなに大量にゴキブリがいんだよ。
と、ふと目をあげるとまた可愛い女の子が「ドアを開けて♡」と無言で俺の顔をみていた・・・

かくしてこんな事を24時間しながらプエルト・イグアスに到着するのであった。
あー腰いて。

続く
2009年 トイレの番人
























0 件のコメント:

コメントを投稿