2014/07/15

ジーコには命を救ってもらった。

突然ですが、ワタクシ2009年にブラジルに居たことがありました。
いました。リオ・デ・ジャネイロ。ふざけんじゃ・ねえよ。

あの丘の上にいるでかいキリストとも会ってきたし、

これね

コパカバーナビーチでリフティングの上手なオッサンにも会ったし、
やたらうまい
 今回のW杯の決勝を戦った「マラカナンスタジアム」のピッチにも立ちましたとも。
客席ひろ!
 それで、大都市にはどこも「スラム街」ってのはあって、 リオももちろんあるんだけど、ちょっとタイプが特殊なの。普通は大都市の裏に集中してる感じなんだけど、リオは他のところと違って無数に点在してんの。で、その点在してるスラムのことを「ファベーラ」って呼ぶ。

で、そこに生活してる子どもたちは成人するまで生きるのも大変。
病死、ドラッグの過剰摂取、ギャングの抗争での死。
ギャングのリーダーは16,17歳ぐらいがピーク。
情報自体は少し古いものだったけど、俺が行った時もそんな感じだったと思う。
「シティ オブ ゴッド」って映画を見てみて。これがわりとわかりやすいかな。ひどい頃の実話。

友達のギリシャ人の超巨漢の船乗り3人組がファベーラのガキどもにすべてを取られて全裸になって帰ってきたこともあった。
俺がタクシーの運転手に「ファベーラ見てみたい」って言ったら普通に怒られて断られた。
それぐらいふざけていられないところだったんだろう。
で、ちょっと話は置いといて。

滞在時に運良く世界的な祭りの一つの「リオのカーニバル」があった。
何日間かあって、その最終日を観に行った。
最終日は一般市民の会みたいなやつで「商店街みこし」の超豪華版みたいな雰囲気だった。
まあ派手。まあ騒がしい。まあ食い込んでる。
そこそこに楽しんだ後にホテルに帰ろうとすると、そこら中でオバちゃんがコンドームを配ってる。
やっぱり「ラテンの国」の祭りの夜は色んな事が起きるのだろう。
セックスに対する概念が違うんだろうな。なんか当たり前な感じでみんなもらいにいってた。

安ホテルに戻って休もうしたらとにかく部屋が暑い。
クーラーをつける。
あれ?なんか変な音がすんな。
・・・・・・クォンクォングォングォングォンゴン!ゴン!ゴンゴンゴン!
 
 何!?部屋の中にまさかの「室外機」があるではないか!?
しかも半端無くうるさいウエに熱風まで吹き出してくる。
そう、「室内機」から冷風、「室内」の「室外機」から熱風がでてくるのだ。なんじゃこりゃ!!

「こりゃ寝らんねーわ」
あまりの矛盾ぶりに、笑いながら寝るのをやめてみることにする 。
外にでよう。

時間は午前1:00過ぎ。
しかしリオにおいてカーニバルの夜は長い。
近くの商店も軒並み営業中であるらしくどこも電気がついている。
リカーショップにいってビールを大量購入。
シャツも脱いで上半身ハダカになり、誰もいないバス停で腰をおろしビールをひたすら喉に流し込む。
「ああ・・うまい・・」←孤独のグルメ風
しばらく深夜涼みをしながらビールを呑んでいると、ちょっと変なおじさんが話しかけてきた。
ガサガサな声で「なにしてるんだ?俺もまぜてくれ」みたいな事を言ってる。ちなみに俺はポルトガル語がほとんどわからない。でもスペイン語がちょっとわかるから大体そんな感じだってことはわかる。
しかもおそらく病気でだと思うのだが、喉元に穴が開いていて指で塞がなくちゃ息がもれてうまく喋れないらしい。余計に聞きとりにくい。
俺はカタコトのスペイン語と流暢なボディランゲージ(?)を駆使しておじさんとのコミュニケーションを図る。
なんとか5分ぐらい会話したら「ちょっと待ってろ」といって彼は立ち去ってしまった。
なにしに行ったのかなと思ってまたバス停とビールの時間に戻ると、さっきのおじさんが15、16歳ぐらいの少年達を連れて帰ってきた。
なんだろう?・・・・
ワラワラと近づいてきた少年達は、

「何を持ってる?」「見せてくれ」「売ってくれ」

みたいなことを言ってくる。
なんだ?
どうやらさっきのオッサンとこの少年達は俺をドラッグの売人だと勘違いしてるようだ。
聞くと近辺にネイティブアメリカン系の売人グループがあるみたいだ。
ネイティブアメリカンに見えたのかな。まあ、肌も焼けてるし、髪も黒くて長かったからな。
しかもこの少年たちは例の「ファベーラ」のギャングの集団だった。
普段は街ナカにはあまり出没しないみたいだが、カーニバルの最終日という事もあって、みんなハイテンションで遊びにきてるのだ。
だんだんと酔っ払ってきた俺にはさほどの危機感もまだなかった。
ま、いっか。なんとかなるだろ。

スペイン語で、
 「俺は日本人だ。ドラッグも持ってない」
 というと、少年たちは顔を見合わせて笑った。
どうやら俺とよく似たやつがいたようだ。

「え?日本人?じゃあ、金盗ろう!」「でもこいつ見た目に金を持ってなさそう・・」「じゃあ殺す?」

的な事を言いながら一気に不穏な空気になってきた。・・・んんよくねえなー。
よし、とりあえず一緒にビールを呑んでみよう。
がきどもにビールを振る舞う仕草を見せると、みんな大喜び。

「こいつはいいやつだ!」「だって顔みたことあるし!」(ないない)

な感じで盛り上がる。
こりゃ大丈夫かなと思ってたら、後ろから7人ほどの第二陣のギャング集団が登場。
超ハイテンションで、

「なにやってんの?」「日本人?」「もうビールはないのか?」「え、じゃあ殺そうよ」

新手の登場でまた話がフリダシにもどる。
きびだんごがわりのビールも底をついた。
最初にきた集団は俺のことをいいやつだと認識してるから、後からきた集団から擁護してくれる。
しかし新手集団は勢いがすごい。
ナイフと拳銃を手で遊ばせながらこっちに向けてくる。
そして最初の集団とちょっともめ始める。

1陣「やめろよ!こいつ悪いやつじゃねえよ!」2陣「うるせえないいだろ!」

あーあ。
風向きが最悪だ。
一手間違えたら死ぬなこりゃ。
ナイフと拳銃にはびっくりしたがそれを手で制しながら、笑顔を見せてカタコトの会話を続けた。
これはコミュニケーションをとり続けるしかない。

その興奮する新手軍団のなかでサッカーシャツを着ているやつがいた。
ブラジル国内のチームのものなのだろう。あまり知らないユニフォームだ。
それで俺はサッカーの話をすることにした。

「お前ら、ジーコは知ってるか?」

つたないスペイン語でこう言った瞬間、そこにいた全員が止まった。
(?!なんでこいつはジーコの名前を知ってるんだ?)
完全に空気が変わった。
「ジーコは前の日本代表の監督だぜ?知ってるか?」
少年達は顔を見合わせて顔を緩ませはじめた。

「そうだ!!そうだった!!日本の監督だった!」「ジーコの事を知っているなんてなんてやつだ!」

これだ。
話題としてはストライクだったのだ。
さらに酔いが回ってきた俺は調子に乗ってジーコが昔に所属したチーム名を挙げてみたり、ジーコがいかに素晴らしい選手だったかを話した。
そしたら少年達もノリノリ。
やっぱりこの国ではジーコは英雄なのだ。
日本なんかでは比べようもないほどの人気だ。

「ジーコの事を知ってるやつに悪いやつはいない!」「そうだそうだ!」 

もうものすごいテンション。
試しに叫んでみた。

俺「ジーコっ!」

すると、

少年1,2「ジーーーーーコーーーーーっ!!」

かくして、「世界の裏側でジーコを叫ぶ」状態になってしまったのだ。

しばらくサッカーの話題でワイワイやってると、悪そうな20代中盤ぐらいのやつが何事かとやってきた。
・・・第3陣なのか?・・・・しかし一人。
少年たちにキツく、

大人ギャング「お前らなにやってる!!騒いでんじゃねえ!!帰れ!!」

って感じで吠え立てる。
 感じ的には先輩ギャングのようだった。
少年達は顔見知りだったらしく、少しつまらなそうな顔をして去っていった。
去り際に第一陣のボスっぽいやつが一言、
「ジーコに会ったらよろしく伝えてくれ!」
・・・・・・・って言われても会う機会はねえわっ!

それにしても 一難去ってまた一難なのか?
まためんどくさそうなやつが・・・
するとそいつは熱気の残ったバス停でこう話かけてきた。

大人ギャング「お前、ジーコをしっているのか?」

そう一言いうと、器用に葉たばこをさっと巻いて俺に手渡した。
俺も手に持ってる3分の1ぐらい残ったビール瓶を無言で渡した。

タバコとビールを交換しながら愉しむ。
タバコを吸い終わると、

大人ギャング「ガキ共はアタマがおかしいやつが多い。いきなり刺されたりするから気をつけろよ。それと日本は良いチームらしいな」

俺「ありがとう。でもブラジル代表にはしばらく勝てそうにない。」

俺がそう言うと、彼はニヤリと笑って手を差し出し、俺と握手をした。
タバコを吸い終わって、

「またな」

と言って別れた。

異国の地で、更にはこんなに治安の悪い地でなんだか心のつながりを感じた。
サッカーは国境を超えて俺たちを一つにしてくれて、ジーコには命を救ってもらった。
サッカーにはそれだけのチカラがあるんだなーって事を本当に実感した。

「サッカー、音楽、踊り」は世界共通言語 。これほんとだぜ。

後にアルゼンチンで同じような経験をするのだが、学習した俺は「マラドーナ」に命を救ってもらったのは言うまでもない。

サッカーが好きで良かったって は・な・し。

ちゃんちゃん。
マラカナンのロッカールームにて

俺と第一陣のボスと喉をおさえないとしゃべれないおじさん
俺こんなんだったんだなー

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